ベトナムに現地法人を設立し、いよいよ新規開拓を始めようという段階で、多くの日系企業が最初に取り組むのがテレアポです。
リストを作り、電話をかけ、アポイントを取る。手法としては非常にシンプルで、費用もほとんどかかりません。だからこそ「まずは自社でやってみよう」と考える企業は少なくありません。
ただ、実際に始めてみると想像以上に手応えがない、という声をよく聞きます。「何件かければアポが1件取れるのか」という目安が見えないまま、担当者のモチベーションだけが下がっていくケースもあります。
今回は、ベトナムでのテレアポの現実的な数値感と、1アポを取るまでに実際どれだけの工数がかかるのかを、現場の感覚に基づいて整理します。
目次
Toggle1. 20件で1アポが取れれば良い方
先に結論から書きます。ベトナムでの新規テレアポは、20件かけて1件アポが取れるかどうかというのが平均的なラインです。
アポ率にすると5%前後です。これは良い日の数字で、30件、40件とかけても1件もつながらない日は普通にあります。逆に、需要がはっきりしている商材であれば、10件前後で1件取れることもあります。
つまり、商材によって振れ幅が大きいということです。
- すでに現場に課題があり、解決策として認知されている商材(コスト削減、人手不足対応など)はアポが取りやすい
- 新しい概念の商材、説明が必要な商材は、電話だけでは伝わりにくくアポになりにくい
1日30〜40件かけて、アポが1件。これがベトナムでのテレアポの標準的な生産性だと考えておくと、計画が立てやすくなります。
2. ベトナムのテレアポは「代表番号からベトナム人スタッフ」が入口
やり方自体は日本と大きく変わりません。ウェブで企業を検索し、サイトに載っている代表電話番号にかける、というのが基本です。
ただし、日本と決定的に違う点が一つあります。電話を最初に取るのは、ほぼ必ずベトナム人スタッフであるということです。
日系企業であっても、代表番号に出るのは受付や総務、管理部門のベトナム人スタッフです。この方が用件を判断し、日本人の責任者につなぐかどうかを決めます。
つまりベトナムでのテレアポは、商材の良さ以前に「最初に電話を取ったベトナム人スタッフを通過できるか」という関門が存在します。ここで止まってしまうと、そもそも決裁者に商材を届けることすらできません。
3. ベトナム人担当者のところで止まる理由と、つなげるための工夫
止まる理由はシンプルです。ベトナム人スタッフの立場から見ると、知らない会社からの営業電話を上司につなぐことに、メリットがほとんどないからです。判断に迷えば「担当者は不在です」で終わらせるのが最も安全な対応になります。
そのため、王道のやり方は用件を簡潔にベトナム語で伝え、日本人の責任者に代わってもらうことです。その際に効くポイントがいくつかあります。
- 社名と用件を一言で言い切る(長い説明は取り次がれない)
- 「日本人のご担当者はいらっしゃいますか」と、誰に用があるのかを明確にする
- 可能であれば事前に担当者名を調べ、名前で呼ぶ
- 折り返しを待つのではなく「今、席にいらっしゃいますか」と聞く
- つながらなければ、Zaloやメールアドレスを聞いて別ルートに切り替える
- 昼休み(11時30分〜13時30分)は避け、始業直後か夕方を狙う
なお現場では、あえて日本語しか通じない体で話し続け、困ったベトナム人スタッフが日本人に代わってくれる、という力技も存在します。実際に通ることはありますが、相手の手間を増やす方法であり、第一印象を悪くするリスクもあります。長く付き合う相手を探す営業である以上、基本は王道のやり方をおすすめします。
また前提として、テレアポを歓迎する人はほとんどいません。電話を受ける側からすれば突然の割り込みであり、良い気分にならない方も多いということは、数字を見積もるうえで織り込んでおく必要があります。
4. リスト作成から架電まで、1アポにかかる実際の工数
テレアポのコストは「電話代がかからないから安い」と誤解されがちですが、実際にかかっているのは人の時間です。
流れを分解すると、次のようになります。
- ターゲット業種を決め、ウェブで企業を検索する
- 社名、電話番号、所在地、事業内容をリストにまとめる
- 上から順に電話をかける
- 不在、担当者不明、断りをメモして次へ進む
- つながった相手には日程調整と確認の連絡を入れる
リスト作成で半日、架電で1日。そこで取れるアポが1件です。
これを人件費に換算すると、実像が見えてきます。日本人駐在員の人件費は、社会保険や住宅手当を含めれば月2,000〜3,000USD以上が一般的です。その人が1日かけてアポ1件を取っているのであれば、アポ1件あたりのコストは決して安くありません。
さらに、この作業は成果が出ない日が続くと精神的な負担が大きく、他の業務を抱えている駐在員が片手間で継続するのは現実的に難しい、という問題もあります。実際、テレアポを始めたものの数週間で止まってしまった、という話は頻繁に耳にします。
5. 自社でやるか、外部に任せるか
テレアポを自社でやるべきケースもあります。判断の目安は次のとおりです。
自社でやる価値があるケース
- 商材の説明に高度な技術的知識が必要で、社内の人間しか答えられない
- 既存顧客との関係が濃く、紹介ベースで広がる見込みがある
- 営業専任の人員がいて、その人の主業務としてテレアポに時間を割ける
外部に任せた方が合理的なケース
- 駐在員が管理業務と兼任で、営業に専念できない
- そもそもリストがなく、ゼロから作らなければならない
- 何件かければ何件取れるのか、市場の反応を早く知りたい
- ベトナム語での一次対応から、日本語での商談設定まで通しでやる体制がない
テレアポは、誰でもできる作業に見えて、実際には「リストの精度」「取り次いでもらう話し方」「断られた後の切り替え」といった蓄積が成果を大きく左右します。1アポに1日かかる作業を、本来もっと重要な業務を持っている人が担うのは、時間の使い方として効率的とは言えません。
営業代行という選択肢があるのは、まさにこの部分を切り出すためです。
まとめ
ベトナムでのテレアポは、20件で1アポが取れれば良い方、というのが現実的な数値感です。
そして1アポを取るために、リスト作成と架電でほぼ1人日がかかります。電話代はかからなくても、人の時間という最も高いコストを使っている、というのがテレアポの本質です。
大切なのは、テレアポをやるかやらないかではなく、その1日を誰の時間で払うのかを決めることです。駐在員の時間を新規リストの架電に使うのか、それとも既存顧客や商談、社内管理に使うのか。ここを整理すると、外部に任せるべき範囲が見えてきます。







