ビンズオンの工業団地まとめ|営業目線の裏話

ビンズオンの工業団地まとめ|営業目線の裏話

ホーチミン近郊で製造業に営業するなら、ビンズオンは避けて通れないエリアです。

VSIP、ミーフックといった大型の工業団地に日系の工場が集中していて、1日で複数社を回れる密度があります。一方で、団地によってホーチミンからの距離がまったく違い、それを知らずに予定を組むと移動だけで1日が終わります。

今回は、ビンズオンの主要な工業団地を「手前側」と「奥側」に分けて、それぞれの特徴と、営業で回るときの実務をまとめます。

ドンナイやロンアンなど、ホーチミン近郊全体の工業団地については「ホーチミン近郊の工業団地まとめ」で紹介しています。

1. ビンズオンはドンナイと並ぶ南部最大級の日系集積地

まず全体像です。ジェトロの2025年の調査によると、日本からビンズオン省への投資認可は357件・約60億ドルで、ドンナイ省の311件・約50億ドルを上回っています。工業団地に入っている日系企業の数で見るとドンナイとほぼ同規模で、ビンズオンは約240社です。

その中でも、日系企業は特定の団地に強く集中しています。

工業団地 日系 全体
VSIP1・2・2A・3(合計) 112社 580社
ミーフック3 45社 252社
プロトレード 14社 69社
ソンタン2 10社 135社
バウバン 9社 173社
ミーフック2 9社 128社
ドンアン2 8社 39社
ナムタンウエン 7社 71社

VSIPとミーフック3の2か所だけで、ビンズオンの日系企業の6割以上が集まっています。 営業で回るなら、まずこの2か所を押さえるのが基本になります。

なお、2025年7月の行政区再編でビンズオン省はホーチミン市に統合されましたが、現場では今も「ビンズオン」と呼ぶのが一般的です。本記事でも旧省名で整理します。

2. 手前側の工業団地(車で約1時間)

ホーチミン市内から車で約1時間のエリアです。日帰りの負担が軽く、奥側の帰りに立ち寄ることもできます。

VSIP1(ベトナム・シンガポール工業団地1)

手前側の中心はここです。

1996年に開発が始まったVSIPプロジェクトの第1弾で、日系の工場が数多く入っています。ヤクルト、ロート製薬のほか、コニカミノルタ、GSユアサ、日東電工、トンボ鉛筆なども進出しています。近くにイオンモールがあり、これが目印になります。

アポイントの難易度は、そこそこ高い団地です。 製造業なので外部に出ている情報が少なく、ホーチミンから近い分、多くの会社が営業をかけているためです。それでも日系企業の数が多く、ビンズオンで営業するなら外せない場所であることに変わりはありません。

VSIP1の企業同士では情報交換の場があるとも聞きます。1社で信頼を得られれば、団地内で話が広がる余地があります。

駐在員はホーチミン市内に住んでいる方が多い印象です。VSIP1の近くにもアパートやレジデンスがいくつかあり、そこに住んでいる方もいます。

周辺の食事にも困りません。日本食レストランの「さくら」やハッピーラーメンがあり、イオンモールの中にはすき家や丸亀製麺も入っています。日本食以外の飲食店も充実しています。

Song Than 1・2・3(ソンタン)

VSIP1から比較的近く、イオンモールからもそれほど離れていない工業団地群です。

古くからある団地で、早い時期に進出した製造業が多い印象があります。規模はソンタン1が全体186社のうち日系3社、ソンタン2が135社のうち10社、ソンタン3が100社のうち4社です。日系の比率は高くないため、VSIP1と組み合わせて回るのが効率的です。

Dong An 2(ドンアン2)、Viet Huong 1(ベトフォン1)、 Tan Dong Hiep A・B(タンドンヒエップ)

手前側にはこのほかにも小規模な団地があります。ドンアン2は全体39社のうち日系8社、ベトフォン1は56社のうち4社、タンドンヒエップBは52社のうち3社、タンドンヒエップAは9社のうち1社です。

ドンアン2は規模の割に日系の比率が高いので、VSIP1の訪問とあわせて検討する価値があります。

3. 奥側の工業団地(車で1時間半〜2時間)

ホーチミン市内から車で1時間半、渋滞すると1時間45分ほどかかります。移動は2時間を目安に見ておくと、アポイントに遅れることはありません。

VSIP2・VSIP2-A

奥側の中心です。日系企業が非常に多く入っており、現地では日系製造業の本陣と言われるエリアです。

このエリアは、東急とベトナムのベカメックスの合弁であるベカメックス東急が、ビンズン新都市「TOKYU Garden City」として開発を進めている地域です。

開発によって生活環境が大きく整ってきました。商業施設のHikariには、寿司の「鮨 煉」、炉端焼きの「炉端あん」、焼肉の「浦江亭」、日本発のピザ店「Pizza 4P’s」などが入っています。2023年7月に開業したショッピングモールのSORA gardens SCには、ニトリ、無印良品、ユニクロといった日系テナントが多く入っています。

VSIP2の製造業の駐在員は、ビンズオンに住んでいる方が多い印象です。 ホーチミンから毎日往復すると片道1時間半から2時間かかるため、それを避けて現地に住む方が多くいます。店が増えて買い物も便利になり、住みやすいエリアになってきています。

My Phuoc 1・2・3(ミーフック)

VSIP2から車で10〜15分ほどの場所にあり、実質的にVSIP2と同じエリアとして回れます。

ミーフック3には日系企業が45社入っており、VSIP群に次ぐ日系の集積地です。クボタのほか、大日本印刷、豊田通商系の企業など、大手の日系工場が入っています。

ここもVSIP2と同様に、アポイントが比較的取りやすいエリアです。 駐在員の多くは、東急が開発したSORA gardensなどビンズオンの新都市エリアに住んでいます。

Protrade(プロトレード)

日系企業が14社入っている団地です。ロート製薬のグループ会社もここに入っています。

注意したいのは位置関係です。VSIP2やミーフックからは車で30〜45分ほど離れているので、同じエリアだと思って予定を組まない方が安全です。 日系企業の密度は高く、攻める場所としては十分に価値があります。

Nam Tan Uyen(ナムタンウエン)

全体71社のうち日系7社の団地です。VSIP2・2Aと同じタンウエン地区にあり、VSIP2の訪問とあわせて検討できます。

Bau Bang(バウバン)

ビンズオンの工業団地の中では、ホーチミンから最も遠い部類に入ります。車で2時間から2時間半かかるので、時間には十分な余裕を持って出発してください。 日系企業は9社ほどです。

距離がある分、営業をかける会社は少なくなります。後述のとおり、遠い団地ほど成約につながりやすいので、積極的に攻める価値がある場所です。

VSIP3

奥側のさらに先にある、新しい工業団地です。2022年に着工し、2025年4月にはレゴが東南アジア初の工場を開所しました。ジュエリーブランドのパンドラも工房を構えています。

VSIP1は事実上の満床となり、VSIP2も大区画の選択肢が限られてきたことから、新規進出の中心はVSIP3やレンタル工場に移っています。日系企業も工場の建設を進めていると聞いており、今後日系の入居が増えていくエリアです。

4. 営業目線の裏話

ここからは、普段あまり語られない話です。

ホーチミンから近い工業団地ほど、アポイント率は低くなります。逆に、遠い団地ほど取りやすくなります。

理由は単純で、遠い場所には営業担当が行きたがらないからです。片道2時間かけて訪問しようとする会社は限られるため、奥側の団地では競合が少なくなります。工場の側から見ても、営業の訪問を受ける機会が少ないので、話を聞いてもらえる余地が大きくなります。

VSIP1は手前側で行きやすい分、多くの会社が営業をかけています。一方、VSIP2やミーフック、バウバンまで足を運ぶ会社は多くありません。

遠いところを攻めるのは、競合を減らすための明確な施策です。 移動の負担はありますが、それに見合うだけの成果が見込めます。

5. 回り方の組み立て

ビンズオンでは、1日3〜4社を回ることをおすすめします。 片道1〜2時間かけて1社だけでは、時間の使い方として割に合いません。

効率が良いのは、手前側と奥側を組み合わせる回り方です。たとえば午前中に奥側のVSIP2やミーフックを訪問し、帰り道にある手前側のVSIP1に午後立ち寄る。奥側への往復の途中に手前側があるので、移動のロスなく社数を稼げます。

組み立てる際の注意点は次のとおりです。

  • バウバンは片道2時間から2時間半かかるので、時間に余裕を持たせる
  • プロトレードはVSIP2やミーフックから30〜45分離れているので、同じエリアとして扱わない
  • 移動には運転手付きのレンタカーを手配する

レンタカーは1日あたり200万ドン程度が目安です。複数社を回るなら、Grabやタクシーを乗り継ぐより確実に効率的です。訪問の間は待機してもらえるので、団地内の移動もスムーズになります。

まとめ

ビンズオンは、ドンナイと並ぶ南部最大級の日系製造業の集積地です。中でもVSIPとミーフック3の2か所に日系企業の6割以上が集まっています。

手前側はホーチミンから約1時間で、VSIP1を中心に回りやすい反面、競合が多くアポイントの難易度はそこそこ高いエリアです。奥側は1時間半から2時間かかりますが、VSIP2とミーフックという大型の集積地があり、しかも競合が少ないためアポイントが取りやすい傾向があります。

距離を負担と見るか、競合の少なさと見るか。その見方の違いが、ビンズオンでの営業成果を分けます。

オタスケでは、ビンズオンの奥側を含め、工業団地の日系製造業へのアポイント設定から訪問同行までを承っています。片道2時間の移動に見合うよう、手前側と奥側を組み合わせて1日3〜4社を回れる日程を組むことができます。

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この記事の著者

OTASUKE VIETNAM 代表取締役 加藤 亮輔

ベトナムの営業現場に精通する専門家。物流、スタートアップ、現地法人責任者として最前線に立ち続けたのちに、営業代行に特化したOTASUKE(オタスケ) VIETNAMを創業。ベトナム特有の商習慣への深い理解を基に「成果にコミットする現地営業部隊」として、多くの日本企業の営業、認知拡大を支援する。

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